AFEELA、Qualcomm本社にてプロトタイプ体験会を実施、ビジョンを共有

2023.08.10
#news
Qualcomm本社にてAFEELAプロトタイプ体験会

「…大胆なビジョン」、壇上のパネリストの一人は最後にそんな印象を口にした。世界最先端の半導体を開発するQualcommのカリフォルニア本社、その広々としたロビーに私たちソニー・ホンダモビリティ(以下SHM)メンバーが訪れたのは2023年6月のことだ。Qualcomm社員に向けたミートアップイベント「AFEELA|Experience at Qualcomm」開催のためである。AFEELAの実車を初体験したQualcomm社員の反応はどの様なものだったのか。そして、私たちがQualcommと並走して目指すモビリティの未来とは。互いに手応えを分かち合った本イベントの様子をレポートする。

AFEELAのアプローチを本社ロビーで実体験

当日の朝、Qualcomm社員が目の当たりにしたのは、両社が手を結ぶと何が起きるのか、その可能性を実感するには十分の成果だった。本社一階では大勢のQualcomm社員が、初めて目にするAFEELA Prototypeを取り囲み、代わるがわる車両に乗り込む。そしてMedia Barと車載インフォテインメントを中心に、車内UXを含むすべてのデモを体験していく。本イベントの最大の目的のひとつは、デモを通じてAFEELAへの理解を深めてもらうことにあった。実車を前にしてSHMの関係者と盛んに議論を交わす、熱を隠しきれないエンジニアの姿も見受けられた。参加した多くの人にとって、両社の掛け算がもたらす次の世界に感じ入る特別な一日となったに違いない。

AFEELAプロトタイプ体験会の様子

私たちがQualcommとのパートナーシップを公にしたのは、2023年1月に開催された世界最大のテクノロジー見本市「CES」でのことだ。車両の頭脳とも言うべきECUに、最大800TOPSもの演算性能を実現するQualcomm Technologies社のSoC「Snapdragon® Digital Chassis™」を採用することを発表し、業界の驚きを呼んだ。当時からQualcomm側の取り組みを指揮する、Qualcomm Technologies社のオートモーティブ&クラウドコンピューティング部門シニア・バイスプレジデント兼GMであるNakul Duggal(ナクル・ドゥガル)氏も今回のミートアップに出席した一人である。2011年の設立以来、Qualcomm Technologies社の自動車向け製品やビジネス戦略を主導してきた彼のチームは、「Snapdragon® Digital Chassis™」の開発のみならず、その継続的強化にも注力してきた。

ミートアップ当日、私たちのインタビューに応じたDuggal氏はSHMとの戦略的パートナーシップに極めて意欲的な姿勢を見せた。「我々はまずSHMとの間で成すべきことを話し合った。しっかりとね。そして、そのすべてが1年後のCESの発表に見事結実したんだ」、彼はそう振り返り、胸を張る。「こういった野心的なプロジェクトを成功させるにはよく練り上げられた緻密な計画が欠かせない。最適なパートナー、最適なバランスと相互補完関係…その相手がホンダとソニーだなんて実に魅力的だと思ったんだ。顧客が心から楽しみ、心から喜ぶ、そんなプロダクトを創り出すこの取り組みの一端を担えることを誇らしく思っているよ」。

AFEELAプロトタイプ

変革を加速させる、Qualcommとの協力

モビリティの未来に関し、Duggal氏にはいくつかのイメージがあるという。例えば、ネット接続により各種データや予測性能、セキュリティ性能が提供され、エンタテインメント以上の体験をもたらす車。あるいは定額制のライドシェアやカーシェア・サービス。「今まさにおびただしい変化の最中だ」と彼は語った。「いわゆる電動化がきっかけだったね。どの自動車メーカーもテクノロジー企業になろうと懸命だ。自動車は今やデバイスであり、居住空間と移動空間、その双方を提供する新しいプロダクトなんだ。長らく変化に乏しかった(自動車という)プラットフォームに多くのイノベーションが急速に注ぎ込まれ、おかげで消費者は目覚ましい恩恵を受けることになるだろうね」。

Duggal氏の指摘する通り、今の時代ほどの変革が自動車業界に起きたのは史上初めてと言っていいだろう。そこには多くの要因が関わっている。ガソリン車からEVへの世界的シフト、サステナビリティへの関心の高まり、シェアリングサービスの普及、またクラウドとの常時接続は安全性やエンタテインメントのあり方を変え、人工知能の活用に道を開いた。私たちSHM は、その一つひとつを途方もない可能性と感じている。
Qualcommとのパートナーシップは、そんな巨大な変革をさらに加速させると私たちは考える。AFEELA Prototypeは車内外に合計45個のカメラとセンサーを備え、同時にそれらを制御する高性能ECUを搭載している。お互いの得意領域を引き出し合うこの種のソリューション連携が、かつてない安全・安心なモビリティ体験を未来から引き寄せることになるはずだ。目下、SHMが目指しているのは、ソニーのセンサー技術、ホンダの安全技術、そして多くのインテリジェント技術を総動員した、世界最高水準のAD/ADASの実装である。特定条件下でのレベル3の自動運転、あるいは市街地などの諸条件に対応するレベル2+の自動運転、そうした次世代の運転支援機能を見据え、その開発を進めている。パートナーとの共創とソフトウェア中心の最新テクノロジーで革新を起こす、そんな大胆なメッセージをCESのステージで打ち出した背景にはこうした技術的な展望がある。

全員が確信した「AFEELA Prototypeは車を超えた存在」

ロビーに隣接するシアターではパネルディスカッションが行われ、両社の協力関係に秘められた様々な可能性が提唱された。中でも注目すべきセッションが2つあった。ひとつは、AFEELAのE&Eアーキテクチャー開発を統括する西林卓也のプレゼンテーションだ。
西林は自身が深く関与するAFEELAの技術的な進歩を述べるにとどまらず、「人を動かす」「モビリティを進化させる」という理念を併せて強調し、その実現にパートナーシップが不可欠であると力説した。その上で、議論を通じて浮かび上がったいくつかの課題を取り上げ、Qualcomm社員と親密に意見を交わしあった。

パネルディスカッションの様子

もうひとつの注目セッションは、AFEELAの抱く壮大なスコープについてグループディスカッション形式で論じ合う「Experience at Qualcomm Auto Panel」である。私たちSHM側とQualcomm側、それぞれ3名が参加し、同社のプロダクトマーケティング担当シニアディレクターであるMichele Gantt(ミシェル・ガント)氏が司会を務めた。
その席上でまず私たちが明らかにしたのは、AFEELAのような先駆的なモビリティは労なくして出現しない、そんな当たり前だが重たい事実だ。AFEELAのハードウェア、ソフトウェア、統合システム、それらのエンジニアリングとプロジェクト管理に何十万もの工数が費やされているが、関係する誰もがそれらに密に携わっており、上映されたプロモーションビデオは、そうした人の手の延長線上に車があると改めて会場中に印象付けた。

一方で、ステージ上でのQualcomm側とのディスカッションは、旧友との再会を思わせる親しげで遠慮のないものとなった。元よりソニーとホンダはQualcommとの関わりが深く、同社の創業以来、いずれもSoCの提供を受けてきた。壇上でお互いに、今にちにいたるまでの親身なアドバイスとサポートに感謝の念を送り合う。そして、この協力関係が生み出す計り知れない可能性について、実に様々な角度から活発に意見を出し合った。エンタテインメントやセンサーの統合について。ワイヤレス接続やバッテリー消耗、ナビゲーションやドライバーの自律性について。あるいは、車外から車内空間へとシームレスに誘導する体験設計について。さらには、独創的でカスタマイズ可能な空間を持つソフトウェア制御のAFEELAはいかに次世代ベンチマークとなりうるか、そんな話題が深掘りされる一幕もあった。

途中、私たちがQualcomm側のパネリストと特に見解の一致を見たのは、AFEELAが車を超えた存在であるという点だった。移動空間でありながら同時に、極めて安全なデジタル空間でもある…それがAFEELAということだ。また、このプロジェクトにおける緊密な協力体制が消費者により良い体験をもたらすという発言にも壇上の全員が頷いた。

Experience at Qualcomm Auto Panel

かたやQualcomm側からとりわけ高く評価されたのは、将来のアプリケーションにも対応できるよう、システム上に十分なゆとりを予め持たせている点だった。どのようなオーディオ/ビデオ・プラットフォームを採用するか、また安全システムの統合をどう進めるか、今後向き合うべき課題は少なくない。壇上のエンジニアの一人がユーモアを交えつつ語ったように「一つひとつの革新性をどのように組み込むか」はまさに難題に違いなく、それを見越したシステム上のゆとりは不可欠なものと言える。

ディスカッションの最後には、AFEELAを現実のものとするべく私たちが掲げるスコープに対し、好意的なコメントを相次いで受け取った。Qualcomm側のとあるパネリストはこの日のイベントを振り返り、3つのフレーズで象徴的に締め括ってくれた。「新しい存在。古い友人。大胆なビジョン」と。

SHMは2025年前半にAFEELAのプレオーダーの受付をスタート。2025年末までに販売を開始し、北米では2026年春からのデリバリーを予定している。今回の「AFEELA|Experience at Qualcomm」は将来生み出される多くの体験の礎となるに違いない。

Snapdragon Digital Chassisは、Qualcomm Technologies, Inc. およびその子会社の製品です。

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